東京高等裁判所 昭和49年(人ナ)6号 決定 1974年8月30日
主文
本件請求を却下する。
本件手続費用は、請求者の負担とする。
理由
本件請求の理由は別紙のとおりである。
右請求の理由によれば、刑の執行猶予の言渡が取消された場合、右刑を執行しうるためには、猶予の期間中に取消決定がなされ、この取消決定が猶予の期間内に確定することを要すると解すべきところ、本件においては、原裁判所である上田簡易裁判所による刑の執行猶予の言渡の取消決定に対する即時抗告棄却の決定の告知があったのは昭和四九年五月一七日であり、執行猶予の期間内であるが、同月二一日特別抗告の申立があったため、原裁判所の右取消決定は確定しないまま特別抗告申立中の昭和四九年六月一日をもって執行猶予期間が満了した。其の結果刑の言渡はその効力を失い、刑の執行をなし得ないものであるにも拘らず、請求者は昭和四九年七月一日検察官の執行指揮により、長野刑務所上田拘置支所に収監されたが、同月六日長野刑務所に移監され、現在拘束者が請求者を拘束しているというにある。
人身保護法による救済の請求は、人身保護規則第四条の趣旨よりして、他の救済の目的を達するのに適当な方法がない場合にのみ認められるべきものと解せられるところ、前記請求の理由より勘案すれば、刑事訴訟法第五〇二条にもとづく異議申立による救済の方法が残されていることが明らかであり、他方、本件請求には、右異議申立による救済の方法によっては相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白である旨の主張ならびに疎明も存在しないから、本件請求は不適法たるを免れない。
よって、人身保護法第七条に則り、本件請求を却下することとし、手続費用の負担につき、人身保護法第一七条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 枡田文郎 裁判官 日野原 昌 裁判官 布井要太郎)